The ayes have it.「目はそれを持っている」?

新シリーズ第1弾の今回は、せっかくなので少し高尚な表現を取り上げます。それは、"The ayes have it."という表現です。

 

2019年10月の段階で、イギリスはEUから脱退するかどうかで大もめになっており、先行きがどうなるかわかりません(注:その後、正式に脱退が決まりましたね)。その様子を伝えるテレビのニュースで、今回取り上げる表現がよく登場します。この表現は、イギリスの国会で、何かの議題に対して投票が行われた際に、その投票結果を伝える場面で議長が発する英語として使われています。最近よくテレビで放映されているので、みなさんも耳にしたことがあるのではないでしょうか。

 

お恥ずかしい話ですが、筆者が初めてこの表現を聞いたとき、"Eyes of it" と言っているように聞こえました。「『それの目』って何だ?」が最初の印象です。何度か聞いているうちに、"The eyes have it."と聞こえて来ましたが、それでも「『目はそれを持っている』って何だろう…?」でした。テレビの字幕には「原案は可決されました」と出ていたので、「へえ、そういう意味なのか…」と思ったものの、どうしてそのような表現を使うのかは不明でした。

 

そこで調べてみると、次のような表現であることがわかりました。

 

○"eyes" と聞こえる語は "ayes" で、"aye" とは "yes" のことである。つまり、The ayes have it. とは「『賛成』つまり『可決』がそれ(本議題の結論)を勝ち取った」ということを表す。

○一方、「反対」つまり「否決」となった場合は、The noes have it. と言う。この "noes" は元々は "nays" であるが、noes はそのまま使われている。

 

さらに、件の投票結果の発表時に議長が述べる全文は次のようであることもわかりました。

 

The ayes to the right 412. The noes to the left 202. So the ayes have it. The ayes have it.

 

また、上記のことばを発する前に "Order! Order!"(静粛に!)と言い、発した後に "Unlock."(解錠する=「議場を開けて解散する」ということ?)と言うようです。

 

なお、上記の文で、賛成票が to the right(右へ)で、反対票が to the left(左へ)とされるのは、イギリスの国会では、投票後に賛成の人が議場の右側にある部屋に行き、反対の人が議場の左側の部屋に行って、そこでそれぞれの人数を数えることから来ているそうです。なるほどね。

 

ところで、"The ayes have it." の aye が yes であることわかると、映画等でよく耳にする、ある表現の意味もわかります。それは、戦争映画などで兵士が上官の命令に対して、"Aye, aye, sir!"と答える場面です。これは、つまり "Yes, sir!" ということですね。また、「いいえ、ちがいますよ!」というような場面で「ネ~イ!」という台詞を聞くことがあるのも、わざと古めかしく "Nay!" と言っているのでしょうね。

 

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