まず、タイトルの意味は「"西部"が始まるところ」です。これは筆者が1983年から84年にかけて留学していたアメリカ、ネブラスカ州のキャッチ・フレーズの1つです。同州はアメリカでは「中西部」と言われる地域にあります。件のキャッチ・フレーズは西部開拓時代にその起点になった場所だということを表しています。同州最大の都市であるオマハ市(Omaha)にはアメリカを横断するユニオン・パシフィック鉄道の拠点の1つであるオマハ駅があることでもそれがわかります。
さて、おそらくみなさんの多くは「ネブラスカ」という州がどこにあるかを知らないのではないでしょうか。それだけ特に特徴も有名な観光地もないような場所です。地図で見ると、アメリカ合衆国のほぼ中央にあります。東がアイオワ州、西がコロラド州、北がサウス・ダコタ州、南がカンザス州に接しているという地理です。州都は州最大都市のオマハではなく、そこから西に100㎞ほど言ったリンカーン(Lincoln)という小さな街です。州の主な産業は農業で、畜産とトウモロコシの生産で有名です。それを反映してか、全米を代表するネブラスカ大学(本校はリンカーン校で、筆者が留学したのはオマハ校)のフットボール・チームの愛称は「コーンハスカーズ」(Cornhuskers=トウモロコシの皮をむく人々)です。
さて、今回筆者がなぜ同州のことをこの時期(12月末)に紹介しているかと言うと、冬真っ盛りのこの時期、同州では毎年とんでもなく気温が低くなることをお話ししたかったからです。その話は本ホームページの「留学に関すること」というコーナーの「(4) 日常のエピソード」でも紹介していますが、筆者が留学していた年のちょうどこの頃は最低気温が−30℃以下になる日もあり(最低は−31.5℃)、晴れている日の日中でも最高気温が−20℃を下回っている日が続いていました。その主な理由は地理で学習した「大陸性気候」にあります。そのため、北極圏からカナダへと降りてくる寒気がアメリカ中西部まですっぽり覆ってしまうことがあるのです。
それだけの低温がどういうものであるかは先述のページに詳しいのでこちらでは省略しますが、今でも日本で12月に寒い日が続くと40年近く前のその時のことを思い出します。寒さと言うより肌を刺すような痛さ、窓の外の人通りどころか車の通りもほとんどなくなった街の静けさ(多くの車がラジエーター液の凍結で動けなくなります)、それと真逆のTシャツと短パンで暮らす室内の暖かさ…。現在の暮らしからは想像できないような貴重な経験をさせてもらいました。
こういう経験は、やはり海外に出かけてみなければできませんね(北海道や雪の多い北陸地方の人は経験しているかもしれませんが…)。海外旅行でもあえて気候の厳しい時期を選んで出かければ少しは味わえるかもしれませんが、観光で行くのと実際に生活するのとではちがいます。
コロナ禍で海外へ留学したくても留学できない人が大勢いると聞きます。でも、けっしてあきらめないでください。いつかそれが可能なときが来たら、絶対に行ってみてください。留学の目的は語学のためであったり、自分の専門分野をさらに研究するためであったりと、人によって様々だとは思いますが、異国で生活するという点ではみな一緒です。そこにはきっとみなさんの常識を覆すような驚きの生活が待っています。そして、そこから得られるすべての経験がみなさんを一回りも二回りも大きな人間へと成長させるでしょう。
留学を考えている人へ。あと少しの我慢です。頑張ってください!(12/26/2020)