オパン・コパンと「可愛い」

知っている人にとっては「ついにその話が出たか!」、知らない人にとっては「何、それ?」という話です。タイトルのオパン・コパンとは、オパンちゃんとコパンちゃん。つまり、楽天お買い物パンダのキャラクターのことです。「♪楽天カードの、パンダ・バージョン、サイコ~(最高)!♪」というテレビCMをご覧になったことがある方も多いでしょう。あれに出てくる2匹のパンダのことです。

 

そのオパン・コパンにしばらく前から筆者の妻がはまってしまっていて、毎日のように更新されてスマホに送られてくる新しいイラストを見ては、「かわいい~!」を連発しています。今では過去にアップされたものも含めて数百枚のイラストが彼女のスマホに入っています。そして必ず「今日の見る?」とニコニコ顔で筆者に見せてきます。

 

スマホに入っているだけならまだしも、娘も息子もそして筆者までも巻き込んでパンダちゃんグッズが家の中にあふれてきました。ダイニング・テーブルにはファンの人たちが一斉に行うカレーフェアのペーパーシートや秋の味覚のイラストのシートが敷かれ、イスの上には新たな企画に参加してもらったパンダちゃん人形が置かれ、テレビ画面の周りにはくら寿司とのコラボでもらったガチャポンのバッヂが貼られ、洗面所にはパンダちゃんをあしらった自動ソープ器が置かれ…。

 

実は、他にも娘がファンの「アザラシさん」というキャラクターが風呂場とトイレを席巻しています。このキャラクターは台詞に少しシニカルな(=cynical、皮肉っぽい)ところがあって、娘の性格に合っているようです。大学生の息子もこれらのファンなので(というか母親と姉に逆らえない?)、話題によく食いついてきます。そうすると私までなんだか仲間に入れられてしまい…。妻、娘、息子から送られてくる LINE のスタンプはたいていがパンダちゃんかアザラシさんです(筆者もパンダちゃんを利用しています)。まあ、可愛いからいいんですけど。

 

ところで、この「可愛い」という感覚は日本人独特のもののようです。海外では「可愛い」にあたる cute が使われるのは主に子供に対してです。大人に対しても「可愛い」というのは日本人だけです。だから、アイドルと言えば「可愛い」を売り物にするわけですが、海外ではアイドルであっても「セクシー」を売りにすることが多く、唯一の例外はオリビア・ニュートン・ジョンであったと言われています(彼女もけっして日本のアイドルのような可愛らしさではありませんでしたが…)。

 

海外ではもはや過去の人になってしまっているオードリー・ヘップバーン(『ローマの休日』でアカデミー主演女優賞と取った可愛らしい女優)は、日本ではいまだに「可愛い~」と言われて大人気です。彼女のポスターが今でも街のあちこちにありますね。筆者が趣味としている映画チラシの世界でも、彼女の主演作品のチラシはスティーブ・マックイーンと並んでいまだに超高額で取り引きされていることからも、その変わらぬ人気のほどがわかるでしょう。

 

ただ、この「可愛い」という感覚が海外、特に西洋の人たちにはないかというとそうでもないようです。日本のアニメやそこに登場するコスチュームなどに興味を引かれる若者が多いことにそれが表れています。彼らも日本人が「可愛い」と思うものを見て、kawaii と言っています。今では、kawaii は kawaii という英語の形容詞になりつつあるとも聞きました。

 

「可愛い」ものを kawaii と言える状況は、とても幸せなことですね。もしかしたら日本を含めた一部の平和な国々だけのものなのかもしれません。世界には紛争が続く大変な国もたくさんあります。先日、筆者の学校の同僚が授業中に自分の生徒と中東のある国の児童がネットのテレビ電話で互いに英語で話すという活動を行いました。その際に、日本の生徒は将来なりたい者として「医者」、「弁護士」などを多くあげていましたが、中東の児童は「戦争のない国になってほしい」。日本の生徒たちはみな言葉を失いました。そういう国でも子供たちだけでなく大人までも kawaii を口にできる日々が早く訪れてほしいものです。(11/15/2020)

 

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オパンちゃん(右)とコパンちゃん(左)

あざらしさん