みなさんのご両親はお元気でいらっしゃいますか? 読者の方が中高生であれば、多くの方のご両親はまだご健在でしょう。読者の方が中高年であれば、ご両親のどちらかまたはお二人共がすでに他界なさっていらっしゃるかもしれませんね。
筆者の場合、父は今から28年前に娘(父にとっては初孫)が生まれた1週間後に娘と命を引き替えるように亡くなりましたが、母は今も健在です。母は京都市上京区で西陣織の帯職人の長女として生まれました(つまり、筆者は半分“京都人”?)。2歳の時に父親が他界したため、母親と0歳児の妹と共に兵庫県姫路市にある叔父の家に居候して戦中を過ごし、戦後に別の叔父を頼って上京し、勤め先で父と出会って結婚しました。以来、二人の息子(筆者と7歳上の兄)を誰に頼るともなく育ててきました。
母は本当に真面目で、曲がったことがきらいな人です。ただし、それを口に出すことはほとんどありません。筆者は小さい頃に今では考えられないような(到底許されないような)遊びもいっぱいやって、失敗もよくしましたが、声を荒げて叱るということはないような人でした。その代わりに黙って一緒に謝りに行ってくれような人でした。その度に母に心配をかけた自分を恥じたことを覚えています。また、不平・不満はほとんど言わず、いつも落ち着いていて日々の生活を送っている人でした。
しかし、その母も父が亡くなってから一人暮らしを25年間続けた3年前に、急に精神的に不安定になったことがありました。遠くに住んでいる兄に代わって筆者が何度か様子見に行ったり泊まったりしましたが、民生委員さんの勧めもあってしばらく入院しました。その後は半年余り老健でお世話になり、2年余り前から老人ホームで暮らしています。お陰様で精神的な不安定は先の入院時に改善され、現在は落ち着いて暮らしています。
老人ホームが筆者の自宅の比較的近くにあるので、以来週に1回程度は筆者か妻、あるいは娘や息子が会いに行っています。筆者が行くと必ず朝から頭が変だの、目の調子が悪いだのという愚痴を言うこともありますが、それでも家族が会いに行くだけで嬉しくてテンションが上がるそうです。ただ、今年は1月はインフルエンザ対策で、2月以降は新型コロナウイルス対策で、母のいる老人ホームは半年以上も面会が禁止となっており、感染がやや下火になった7月に一度だけ30分間のロビー面接で話ができただけです。
その母が今日で91歳になりました。幸い痴呆症にもかかっておらず、下手をすると筆者よりも記憶がしっかりしているくらい頭はしゃきっとしています。多少耳が遠くなっていて、長い時間の歩行には補助車が必要ですが、内臓系はどこも悪くないので、まだまだ長生きしてくれそうです。子供が親よりも先に逝ってしまうという最大の親不孝をしないようにしなければ…。(8/29/2020)