冬の日差しの中で

筆者の現在の勤務校は3校目で、その学校に勤めて25年目になりました。勤務校は都心の一等地にあるのですが、そんな場所にあるとは信じられないくらい広い敷地を有しています。しかも、以前に本欄に書いたとおり、春にはウグイスが鳴き、2階の会議室の窓の目の前にある寒桜の木にはメジロがかわいい姿を見せてくれます。また、夏にはセミの大合唱を聞くことができるほど綠にも恵まれたところです。

 

そんな環境にあるからでしょうか、25年も都心に通っていながら、都内の他の場所にはあまり行ったことがありません。近くには、歩いて行ける距離に六義園や小石川植物園といった有名な庭園もあるのに、そこにすら行ったことがないのです。妻にはいつも「せっかく都内に通っているのに…」と言われますが、仕事がない日くらいは職場に近づきたくないという気持ちがあるので(この気持ちをわかってくださる人もいると思います)、なかなかそういうところに足が向かないのです。

 

そんな私ではありますが、先日都内でこれまで行ったことのない場所に行ってきました。その日は妻が都内の病院に診察に行った日だからだったのですが、前日に「何かおいしいものが食べたいなあ…」と私がつぶやいたのを妻が聞いて、「じゃあ、診察後に都内でランチしましょう」と連れ出されたというわけです。妻は、その昔独身の頃、都内にある企業でOLをやっていたこともあって、日頃から都内のお店のチェックに余念がなく、機会さえあればどこかに行きたいと思っている人なのです。

 

そんな妻が今回選んだレストランは、私の「美味しい中華が食べたい」という希望と妻の「新幹線が見えるレストラン」という希望の両方が満たされた、有楽町駅前の中華レストランでした。よい場所を取るには早めに行かなければならないということで、開店前にお店に行くと一番乗り。そして案内された席は、最も新幹線がよく見える一番良い席でした。新幹線がすぐ近くで目の高さのところを通るだけでなく、なんと東京駅に停車している新幹線の先頭(最後尾)まで見えるのです。筆者はけっして電車がきらいではありませんが、妻が私以上に興奮しているのを見て、妻がそこまで新幹線が好きだったのかということを改めて知りました。

 

ランチを食べただけで満足した私でしたが、「せっかく都内に来たのだから、どこか散歩でもしましょう」という妻の提案で、駅をはさんで皇居側にある日比谷公園に行きました。中学生の頃に毎週のように日比谷の映画館(日比谷映画、有楽座、みゆき座、スバル座等)に通っていた筆者ですが、映画街の外に出るということはなかったので、今回初めて同公園内を歩きました。

 

その日はちょうど快晴で、冬にしては陽光がぽかぽかと温かく、散歩するのにはちょうどよい気候でした。入口付近で公園の由来を学び、公園内のテニスコートでテニスをする人たちや遊技場で遊ぶたくさんの子供たちの歓声を聞きながら、二人でのんびりと散歩を楽しみました。空を見上げると、青空を囲むように林立する高層ビル群との対比がなんとも面白いという印象ももちましたが、そんな都心にもゆったりとした時間が流れる場所があるのだなと改めて知りました。

 

「今度はどこに行ってみようかな…」そんなことをようやく思うようになったのは、冬の日差しの温かさのせいかもしれません。(12/28/2019)

 

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