みなさんは「ワッパ-」をご存じですか? 英語では、Whopper とつづります。ハンバーガー・チェーン「バーガー・キング」(以下、BK)の主力商品です。マクドナルド(以下、マック)などで売られている標準的なサイズのハンバーガーに比べて、真上から見た面積が約2倍ほどもある大きなハンバーガーです。ちなみに、whopper とは whop(ぶったたく)から来たことばで、「とほうもないもの」「でっかいもの」を意味します。
先日、そのBKに久しぶりに行きました。最後に行ったのが、アメリカに留学中の1984年のことですから、実に35年振りのことでした。留学当時は週に3回くらい利用していたのですが、日本で行ったのはその日が初めてでした。ずっと関心はあったものの、なぜかお店に立ち寄ることがなく、最近になって同社が日本から撤退することを考えているというニュースを聞いて、無くなる前に食べておこうと思ったというわけです。
同社は日本ではあまりなじみがありませんが(特に地方の人には)、本家のアメリカではマックと人気を二分する、庶民のためのお店です。ただ、そのアメリカでも後発の会社なので、すでに巨人となっていたマックに追いつけ・追い越せと、1984年当時はあの手この手の戦略をとっていたことが印象的です。それはちょうど、コカコーラに対するペプシコーラのハンバーガー版という感じでした。
例えば、こんなCMがありました。ある人がドライブ中に空腹を感じ、1マイル先にマックがあることを思い浮かべます。ところが、しばらくして2マイル先にBKがあることを知り、マックを通過してBKのお店に入るというストーリーです。他にも似たようなものが何本かあったと思います。日本では絶対に許されないパターンですね。
また、普通なら競合するお店とは離れたところにお店を出すと思うのですが、同社はライバル店の隣や道路の反対側にわざと店を構え、正面から戦いをいどんでいました。しかも、マックとBKはお店ごとに値段を変えられたので、一方のお店が値段を下げると、もう一方はさらに下げるという、値下げ合戦もしていました。筆者が留学していた街では、最初は一番安いハンバーガーが1個60セント(=0.6ドル。当時は1ドル=約250円)でしたが、50セント、45セントと値下げ合戦をしていき、最終的には両社とも39セントになりました。
そんな中で、BKは新たな戦略に出ました。それは students' discount、つまり"学割"です。学生証を見せて1個99セントのワッパーを買うと、Mサイズのペプシコーラが無料で付いてくるのです。つまり、1ドルでお腹いっぱいになるということです。これは筆者のような貧乏学生には大変ありがたいものでした。先述のとおり「週に3回」も通っていたのは、この学割があったからでした。
そんな懐かしい思い出とともに久しぶりに食べたワッパーは、当時と同じくらいボリュームのあるものでした。味も当時とほぼ変わらず、やや薄味の、どちらかというと素材の味がわかるものでした。また、野菜はトマトとレタスが添えられており、食べ終わる頃にはお腹がいっぱいになっていました。
あっ、筆者はなにもBKのコマーシャルをするために今回の話を出したわけではありません。自分にとっては懐かしい思い出の中に、アメリカ社会の面白い一面があったことをお伝えしたかったからです。(10/5/2019)