もう20年くらい前になるでしょうか。テレビのニュースで聞き慣れない、あるカタカナ語を頻繁に聞くようになりました。それが今回紹介する「インバウンド」です。確か、「インバウンド需要」などの政府が目指す観光立国のためのことばだったと思います。
元の英単語の inbound は、「外から内へ」とか「内向きの」を表す形容詞です。これを観光関係で使うと、「在日している外国人観光客」という意味で使われます。その頃は「ガイジン(外人)」が差別用語だと言われ始めていた頃なので、それに代わるちょうどいいことばだったのでしょう。当時は「いったい何のこと?」と思ったものですが、今では多くの人が理解することばになりました。
そのインバウンド需要もコロナ禍ですっかり影を潜めたと言われていましたが、今春の開放政策によって再び戻ってきたと聞きます。ただ、観光地に出かけないとなかなかそれも実感できません。筆者の場合は、3月末に兵庫県姫路市に母方の家系の調査に行ったときに実感しました。
その調査には丸2日かかると踏んでいて、1泊2日の2日目の帰りの新幹線は夕方発を予約してありました。ところが、1日目に予想以上の成果があって調査が終わってしまったので、2日目は姫路城の観光に行くことにしました。過去に2回バイクで目の前を通ったことはあったのですが、いずれのときも時間の関係でお城の見学はパスしてしまっていたので、今回初めて中にも入りました。
姫路駅から真っすぐに伸びる道の正面に威容をたたえる同城に着くと、手前の城公園の時点でまるでお祭りかと思うほどの人出が見えました。しかも、その多く、いやほとんどが外国人です。桜の満開時とも重なったので、多くのツアー客が押し寄せていました。
そのまま人の流れに任せて城の入り口まで来ましたが、そこでしばらく入城制限に遭いました。その後も何ヶ所かで同じように待たされたりしながら、外国人の団体客と一緒に天守閣まで行ったのてすが、結局最上階まで上がるのに入り口から1時間半もかかりました。
登っている間は、オーストラリアの団体客と一緒だったので、彼らの何人かとおしゃべりをしました。それ以外に聞こえてくることばは、ドイツ語、フランス語、スペイン語他のヨーロッパ言語と、中国語、韓国語、ベトナム語などのアジアの言語ばかりで、日本語が聞こえてきません。ようやく降りる途中で大阪弁のおばちゃんに出会ったくらいでしょうか。
天守閣を降りて城の出口までくると、まだまだたくさんの外国人観光客が列をなして並んでいました。日本で屈指の観光地でありながら、すでにそこは日本ではないのではないかとの錯覚を覚えました。(4/8/2023)
大混雑の姫路城天守閣最上階
日本語は聞こえてきませんでした
桜が満開だった姫路城
広場もお花見客でいっぱいでした
姫路市のご当地マンホール
関心をもつのは日本人だけでした