テレビではよく「マイナンバー・カード」の取得キャンペーンのコマーシャルを見ます。取得するとポイントがもらえるということをうたい文句に、欲しいと思わない、必要性を感じない、人たちを引き込むために多額の税金を積み込んでいるようです。筆者はすでに何年も前に“必要性を感じて”取得を済ませています。それは、所得税の確定申告をネットで行うために必要だったからです。
マイナンバー・カードを発行することについては、その構想が発表された当初から「“国民皆背番号制”だ!」という批判がありましたが、それをかわすためか、「マイナンバー」などという安易な英語のようなカタカナ名にしたために、かえって本来の目的がわからなくなり、余計に取得を躊躇させるようなことになっているように思います。アメリカのように、「それが無ければ社会保障を含めて各種のサービスが受けられなくなりますよ」というものにすれば、余計な税金も使わずにすんだのにと思わずにおれません。
筆者がそう思う理由は、今から40年前の1983年から84年にアメリカの大学に留学したときに、アメリカではすでにそのようなカードが存在し、アメリカ国民全員はおろか、筆者のような留学生さえもそれを持っていたからです。そのカードの名前は、Social Security Number(SSN) という物で、直訳すれば「社会保障番号」です。その名前を見ればそのカードの目的は明らかで、アメリカでごく普通に市民生活をするには必要なものであるのがわかります。
留学生であった筆者がSSNを取得した理由は簡単で、それを持っていなければ生活するのに困ったからです。例えば、文部省(当時)から奨学金を送金してもらうための銀行口座が開けません。取得するまでは家主が保証人となってくれましたが、そのせいで預金通帳もパーソナル・チェック(個人用小切手。「171. 留学中の支払い方法」参照)も家主と筆者の連名にせざるを得ませんでした(後にSSNを取得して筆者の単独名に変更)。また、運転免許証も取れません(大きな厚紙製の国際免許証を持っていましたが、より簡便な身分証明書として必要でした)。学生証の学籍番号もSSNでしたから、もし取得していなかったら、発行してもらえなかったかもしれません。
なぜ「マイナンバー・カード」などいうばかげた名前にしたのでしょうね。アメリカと同じように「社会保障番号カード」のような名前にすれば、このカードを取得することがいかに重要なものであるかということを国民に理解してもらうことがかなり容易であったように思います。(2/25/2023)
筆者の SSN カード(当時もの)
※番号は3-3-4の10桁(下4桁はマスク)
筆者のUNO学生証
※左のSSNと同じ番号(下4桁はマスク)