おそらくこれを読んでいる多くのみなさんは、一(ひと)組の主語と動詞でできている文を「単文」と呼ぶのは知っていることと思います。そして、複数の文(正確には「節」)できている文を「複文」または「重文」と呼ぶのも知っているでしょう。しかし、「どういう場合が複文で、どういう場合が重文だっけ?」や「どっちがどっちだっけ?」という人は少なくなくないと思います。
実は、筆者も「どっちがどっちだっけ?」派の一人で、授業で扱ったり、こうして公開される文章を書いたりするときには、文法の教科書でそれを確認しています(笑)。
では、そのような人も含めて、改めて英語の単文、複文、重文について見ていきましょう。なお、例文の多くを "A NEW GUIDE to English Grammar<ニューアプローチ英文法>"(東京書籍)から拝借しています。
1.文の種類
英語の文には大きく次の3種類があります。
① Baseball is his favorite sport.
② Baseball is his favorite sport, but he belongs to the swimming club.
③ Baseball is the sport (which) he likes the best.
まず、①が単文(simple sentence)です。すぐにわかりますが、文を成り立たせる主語と動詞が一組あるだけで、それ以外の語は文の内容を明確にするためのものです。
次に、②が重文(compound sentence)です。重文とは、複数の文が等位接続詞でつなげられて並んでいるものを指します。したがって、接続詞の部分で切り離すことができます。
そして、③が複文(complex sentence)です。複文とは、1つの文の中に別の文のような部分(名詞節、形容詞節、副詞節)が組み込まれているものを指します。したがって、2つを切り離すことはできません。
さて、前述のように、やっかいなのは「どっちが重文でどっちが複文だっけ?」ということですね。両方とも複数の文(節)を使っている上に、文が重なっているというのがどちらのことを表しているのかが、わからなくなってしまうからです。なにせ、複数の文が並んでいるのが重文で、見た目には重なっているイメージが強い方が複文だと言うのですから。
そこで、覚え方としては、「見た目のイメージとは逆の方」とするのがいいと思います。筆者はそうしているのですが、何か他にいい覚え方があるでしょうか?複文の方を「複雑な文」と考えればいいでしょうかね。
2.重文と複文
では、重文と複文についてもうすこし詳しく見ていきましょう。重文にも複文にもいろいろなタイプのものがあります。
(1) 重文
① I like soccer very much and belong to the soccer team.
② The last train had left the station, so we had to walk home.
③ I cannot speak English well, but my sister can (speak it well).
重文は、複数の文が等位接続詞でつなげられている文だとしました。ここで言う「等位接続詞」とは、上記の①~③に使われているような接続詞(太字の語)を指します。いずれも文も接続詞の前で切り離したとしても、それぞれの文が独立して存在し得るものであることがわかります。等位接続詞にはこの他に、for(というのは)、or(あるいは)、yet(しかし、けれど)、nor(あるいは、※否定文のみ)などがあります。
なお、等位接続詞は2つの文の内容がそれぞれ独立した意味をなすようにつなげる接続詞ですが、一方の節が他方の節の説明になるようにつなげる接続詞もあります。それを「従属接続詞」といい、次の(2)の例文で登場します。
(2) 複文
① I think that he will pass the entrance examination.
② I don't like people who lose their temper easily.
② If it is sunny tomorrow, I will play tennis with my friends.
複文は、文の中にもう1つの文のような節(名詞節、形容詞節、副詞節)が含まれているものであるとしました。
まず、①は名詞節(斜体部)を伴う例です。この節は think(~と思う)の「~」にあたる部分、つまり目的語になっていることから、名詞節であることがわかります。名節節には他に、疑問詞を使った間接疑問文や先行詞を含む関係節(what ~ や where ~ など)があります。
次に、②は形容詞節(斜体部)を伴う例です。この部分がその前にある people(先行詞)を修飾する内容になっていることから、形容詞節であることがわかります。
そして、③は副詞節(斜体字)を伴う例です。この部分は、主節の内容に対してその理由を説明するものになっていることから、副詞節であることがわかります。主節の内容を説明する副詞節には、「時」を表す接続詞(when, while, as, after, before, till, until など)を伴うもの、「理由・原因」を表す接続詞(because, since, as, now that, that など)を伴うもの、「目的・結果」表す接続詞(so that, in order that, in case, for fear, so ~ that, such ~ that など)を伴うもの、「譲歩」を表す接続詞(though, although, even if, even though, no matter +疑問詞, whoever, wherever, however, whether ~ or ... など)を伴うもの、「様相・範囲・その他」を表す接続詞(as, as far as, as if, as though, as long as など)を伴うものがあります。
3.文の書き換え
本来は、文のスタイルが異なれば伝えたい意味やニュアンスも異なるのですが、ほんの少し工夫を加えると、それぞれ似たような意味を保ったままで、重文や複文を単文にしたり、重文と複文を交互に書き換えたりすることができます。ここではその例をいくつか見てみましょう。ただし、細かいちがいを含めるとそれぞれかなりの数になるので、代表的なものだけに絞って示します。なお、繰り返しますが、文の形を変えれば伝えたい内容の重点が変わるので、けっして両者は「同じ意味の文」ではないことはあらかじめお断りしておきます。
(1) 重文⇔単文
① I sat up all night and waited for you to come home.
I sat up all night waiting for you to come home.
② The ice is quite thick, so we can walk on it.
The ice is thick enough to walk on.
③ It was raining, but we decided to walk on.
In spite of the rain, we decided to walk on.
①は、分詞句(斜体部)を使って複文を短文に書き替えた例です(もちろんその逆も可。以下同様)。
②は、不定詞(斜体部)を使って複文を短文に書き替えたです。
③は、副詞句(斜体部)を使って複文を短文に書き替えた例です。
(2) 重文⇔複文
① His idea sounds good, but it won't work in practice.
Though his idea sounds good, it won't work in practice
② The ice was so hot, so I burned my mouth.
・As the tea was very hot, I burned my mouth.
・The tea was so hot that I burned my mouth.
①と②は、いずれも等位接続詞を従属接続詞とすることで、重文を複文に書き替えた例です(もちろんその逆も可)。②はさらに2つの方法で複文にした例です。
(3) 複文⇔短文
① It is necessary that you should do something for her.
It is necessary for you to do something for her.
② The railway that connects the two cities is held up at present.
The railway connecting the two cities is held up at present.
③ When I turned the corner, I saw a footbridge on the left.
Turning the corner, I saw a footbridge on the left.
①は、名詞節(1文目の斜体字の部分)の複文を不定詞(2文目の斜体字の部分)を使って短文に書き直した例です(もちろんその逆も可。以下同様)。It is ~. の文の他、名詞節のthat-節の文、間接疑問の文などがこの方法で書き替えることができるものがあります。
②は、形容詞節(1文目の斜体字の部分)の複文を分詞(2文目の斜体字の部分)を使って短文に書き直した例です。この他にも、形容詞、所有格、不定詞、形容詞句を使って短文に書き替えることができるものがあります。
③は、副詞節(1文目の斜体字の部分)の複文を分詞構文(2文目の斜体字の部分)を使って短文に書き直した例です。この他にも、不定詞、動名詞、副詞句を使って短文に書き替えることができるものがあります。
<終わりに>
いかがでしたか?これらを実際の会話などの即応性が必要な場面で使いこなすのは大変ですが、じっくり時間を取ることができる作文などでは、もっともよく伝えたい内容を伝えられる表現を選択したいですね。