大文字と小文字はどちらが先にできたのか?

アルファベットには大文字と小文字があります。2つが同時にできたとは考えられないので、どちらかが先にできたはずです。いったいどちらが先にできたのでしょうか?  ネット等で調べればすぐにわかることですが、それでは面白くないので、少し考えてみましょう。

 

筆者が生徒に尋ねた経験では、第一印象ではたいてい大文字派と小文字派が半々です。

 

次に、それぞれどうしてそう思うのかを尋ねると、次のような答えが返ってきます。


【大文字派】

・大きくて書きやすいから。

・直線が多くて書きやすいから。

・大文字から小文字ができたように思える。


【小文字派】

・小さくて書きやすいから。

・小文字だけだと文頭がわからないので、大文字ができた。

・小さい物から大きい物ができるように思える。

 

どの答えももっともな気もします。そこで、もう少し考えてみましょう。

 

文字はそれを使う人々の生活の中で生まれ、変化していきます。つまり、その文字を使う人々の「文化」と言えます。そしてある視点で見ると、人間の文化はどの人種や民族でも同じように変化してきています。したがって、他の言語で文字がどのように生まれ、どのように変化してきたのかを見れば、英語のアルファベットにもそれが当てはまる可能性が高いと言えます。そこで、「他の言語」の代表として、日本語の場合を考えてみましょう。

 

日本語には、漢字、カタカナ、ひらがながあります。この3つのうちで最初にできたのは漢字ですね。文字を持っていなかった日本人は、それを中国から輸入しました。そして、そこからカタカナとひらがなができたというのは、小学校4年生の国語で習いますから、覚えている人も多いでしょう。

 

では、なぜ漢字からカタカナとひらがなができたのでしょうか? なぜ漢字だけではダメだったのでしょうか? 2つ目の質問に対しては、おそらく次のような反応があるでしょう。


・漢字は数が多すぎて、覚えるのが大変である。

・漢字は画数が多くて、書くのが大変である。

・漢字は複雑なので、文字が大きくなる。

 

以上のことは、今でもみなさんがそう思っていることでしょうから、真実と言っていいでしょう。そうだとすると、逆にカタカナやひらがなの利点は以下のようになります。


・数が少なくて、覚えやすい。

・画数が少なくて、書きやすい。

・簡単なので、小さく書ける。

 

ここまで確認できたところで、人間の文化がどう発達するかを考えてみましょう。仮に、ある文化の中で、「複雑だ」「大変だ」「不便だ」と思うことと、「単純だ」「簡単だ」「便利だ」と思うことがあった場合、どちらが先にできるでしょうか?

 

そうですね。前者が先にあって、後者が後に作られるのが普通です。後者が先にあったら、わざわざ前者を作るはずがありません。実際の私たちの生活を見ても、不便なことがあれば、それを便利にする新しいことが生まれます。その逆に後戻りすることはありません。先ほど、文字も文化の1つだと述べました。つまり、文字も不便なものが先にあって、便利なものが後からできたのです。

 

ここまで確認できたところで、アルファベットの大文字と小文字を改めて見てみましょう。


・数は大文字も小文字も同じ。

 →これについてはちがいなし。

・画数は大文字が小文字より多い。

 →小文字の方が速く書ける。

・大文字は小文字より大きい。

 →小文字の方が多く書ける。

 

もう答えはわかりましたね。

そうです。大文字が先にできて、そこから小文字ができたのです。

 

実際の答えは、ローマ帝国時代の遺跡に刻まれている文字を見ればわかります。その当時の文字は大文字しかありません。ネットで探してみれば、すぐに以下のようなものが見つかるでしょう。 

 


 

<豆知識>

ここからは余談です。では、小文字ができたきっかけは何だったのでしょうか。それは、ある物が発明されたことによります。それは、文字を「もっと多く書きたい」「もっと速く書きたい」「もっと簡単にそれを誰かに読んでもらいたい」という人々の欲求から広まったものです。

 

そうです。それは「紙」(パピルス)の発明です。紙の登場によって、人々は自分が伝えたい情報を手軽に相手に伝えられるようになりました。しかし、そうは言っても、当時は紙はまだ貴重品でした。ですから、できるだけ多くの情報を1枚の紙に書きたかったわけです。それに対応したのが小文字でした。大文字に比べて小さいので多く書ける、速く書ける、等の利点があり、長年使われているうちに現在の形になったというわけです。(11/24/2018) 

英語教師の方々へ

今回の話は、筆者の勤務校では毎年中1の最初に教えている、生徒に大変人気のある話です。なぜかと言えば、知的好奇心をくすぐる話であるだけでなく、誰でも正解を出せる可能性がある話でもあるからです。生徒に疑問を投げかけ、出てくる答えを上手に拾いながら進めていけば、実に活発に生徒が発言する授業を展開することができます。細かい指導過程は、上記の流れのとおりにやっていただければいいでしょう。

 

注意したい点は、正解を知っている生徒にいきなり「大文字が先だと~に載っていた」などと言われると、全員に考える機会を与えられなくなってしまうことです。それを避けるためには、「正解を知っている人は、ずばり正解を言わないで、『~だから、…ではないかと思う』と意見として言ってください」とあらかじめ言っておくことです。