シリーズ第3回は、通学・通勤、ツーリングにと、最も多くの距離を走ったモデルです。
【モデルの概要】
1974年、ホンダはCB350Fourの後継機種としてCB400Fourを発売しました。しかし、並列4気筒の同モデルは製作コストが高すぎたため、新たに2気筒のモデルを出すことになりました。そして、1977年にホークⅡ CB400T が発売されたのです。
新たに発売されたモデルは、OHC(オーバー・ヘッド・カムシャフト)でありながら吸気バルブが2つある、3バルブ機構という珍しいエンジンを搭載していました。そしてそれは、当時の最高峰であった“リッター100馬力”を叩き出す40馬力という高性能エンジンでした。
ただ、初期モデルはガソリンタンクがボテッとした丸い形をしていたことから「やかんタンク」などと揶揄され、たった1年でかなり細身のタンクにマイナーチェンジされました(写真は2代目)。
派生モデルとしては、ほぼ同時に車体は一緒でエンジン排気量のみ小さい「ホーク CB250T」が発売され、CB750Fを真似た流線形スタイルの「ホークⅢ CB400N」も発売されました。こちらは、ホークⅡの5速に対してクロスレシオの6速ミッションを備えており、低く短いコンチネンタル・ハンドル、やや後ろに付けられたステップなど、走りに徹したモデルでした。また、CB750Aと同じように2速オートマチック・トランスミッションを備えた「ホーク CB400A ホンダマチック」も発売されました。こちらはほとんど売れなかったはずなので、今ではかなり希少なモデルとなっているでしょう。
ホークⅡCB400T(初代)
通称「やかんタンク」
ホークⅢ CB400N
ホーク CB400A
ホンダマチック
【購入エピソード】
第2回の「XL125S」のところでもふれましたが、高校卒業から大学入学までの間の春休みに紀伊半島ツーリングを経験したことで、もっと大きなバイクーつまり中型限定免許で乗れる最大排気量のモデル-で日本一周をしてみたくなりました。
そこで、必死にアルバイトをしてお金を貯め、XLを下取りに出して本モデル(2代目。色は黑)を手に入れました。実はすでに出ていたホークⅢも頭にはあったのですが、前傾姿勢は長距離ツーリングには向かない気がしたのと、親友のO君がそれを買うつもりでいたので、私はこちらにしました。
ところで、前のXLのときもそうだったのですが、こちらも親友のO君のバイク(CB400N)とナンバープレートが「1番ちがい」でした。XLは市内のナンバーなのでまだわかりますが、こちらは県のナンバーなので、それが一番ちがいというのは、買った日がいかに近かったがわかります。おそらく販売店が2台を一括して登録したのでしょう。
【ツーリング・エピソード】
このバイクでは本当にたくさんのところに行きました。北は北海道から南は鹿児島まで…。まさに「日本一周」と言っても過言でないくらいあちこちを走りました。
その中で最も印象深かったのは、北海道と九州でした。北海道は往復(往路は陸走、復路はフェリー)も含めて14日間、九州は往復(往路はフェリー、復路は陸走)も含めて12日間の長旅でした。
これらの旅では、宿泊は主にテントと寝袋での野宿でした。北海道では温泉マークが近くにあるキャンプ場をよく利用し、九州では駅の待合室をよく利用しました。後者は今ではおそらく無理でしょうね。たいていはパトカーや駅前交番のおまわりさんと仲良くなったりする(宮崎駅のときは夕飯を食べに連れていってもらいました。あのときのおまわりさんはお元気かなあ…)、古き良き時代でした。
【追加の装備】
当時は、純正のオプション・パーツといえばエンジンガードや荷台くらいしかなかったので、部品を交換したり追加したりする場合は社外品を手に入れるしかありませんでした。筆者は基本的に車体を“改造”するのは好きではなかったので、やるとなれば“追加”しかありませんでした。
最初に取り付けたのは、ツーリングの際のかぜの抵抗を和らげるためのセミ・カウルでした。胸にあたる風が軽減されて、少し快適になりました。また、倒したときのことを考えてエンジン・ガードを付け、荷物をいっぱい積めるように荷台も付けました。
やがて、もう少し本格的なツーリング・マシンにしたいと思い始め、カウルをハーレーFLHのようなフルカウルにし、ハンドルもCM400T(CB400Tから派生したアメリカン・タイプ)のブルバック・タイプにつけ替えました。また、リアのトップと両サイドにこれまたハーレーのようなボックスを付けました。
こうなると、気分は「グランド・ツアラー」です。そこで、当時アメリカで売られていたホンダ GL1200 GOLD WING INTERSTATE をまねて、カウルに "GOLD HAWK"、サイドバッグに "INTERSTATE" と金文字を入れて、ツーリングモデルであることを強調しました。
さらに…もはや「あきれられる」レベルですが…、フルカウルの中にカーステレオとステレオ・スピーカー(2個)を取り付けて、走行中に音楽を聞けるようにしました。いずれもカウリングにネジ留めしました。当然、大きな音が外に漏れている(いや、最初から囲っていないので「漏れている」わけではない?)ので、よく歩いている人に振り向かれました。なお、防水もせずに何年間も雨の中でも走りましたが、最後まで壊れませんでした。
【長所・短所】
このモデルの長所は、なんと言っても「乗りやすさ」です。エンジンはスムーズかつパワフルで、乗車姿勢も楽で、ツーリングにもってこいの要素がそろっていました。短所はスタイルの野暮ったさと低回転域のモサッとしたエンジンのフィーリングでしょうか。後者については、360度クランク(2気筒がちょうど1回転ずつずれている)であることからきていると思われ、180度クランク(2気筒が半回転ずつずれている)のスズキGS400と比べると、低・中回転域の軽快感に欠けていました。
【別れ】
結果的に、このモデルには6年間、計約68,000km乗りました。最後は後に紹介するXL200Rの購入の際に廃車処分しました。
セミカウルを付けたところ
雪の降る阿蘇山(熊本)で
夏の千里浜海岸(石川)で
旭川YH(北海道)で
※右から6番目
洞爺湖キャンプ場(北海道)で
初めてのテント・キャンプ
厳島神社(広島)で
※潮が引いた鳥居の土台の所
三脚&セルフタイマーで撮影