シリーズの第1回は、筆者が最初に乗ったバイクであるホンダ ダックスST50です。なお、本シリーズを立ち上げた理由は、「158. バイクの思い出⓪:プロローグ」をご覧ください。
【モデル概要】
このモデルは、1969年に発売された人気モデルで、発売当初は「ダックスホンダ」という名前でした。それは「ダックスフンド」という犬の名前をもじって付けられたからです。初代モデルは3段の自動遠心クラッチ(アクセルを戻すとクラッチが切れる)でしたが、2代目からは4段リターン式のマニュアルクラッチになりました。また、1972年には90cc版(通称「マイティダックス」)も発売されました。こちらは原付二種なので制限速度が50km/hで、二人乗りもできました。
イタリアの女優、ソフィア・ローレンが「ラッタッター!」と言いながら楽しそうに乗るコマーシャルで大人気を博したスクーターが一般的になると人気がなくなったものの、何度か消えては復活することを繰り返しながら細々と生産が続けられ、ついに2003年に絶版になりました。ところが、2022年にほぼ昔と同じスタイルのダックスが復活しました!ただし、排ガス規制の関係で50ccは出されず、125ccのみとなりました。
【購入エピソード】
このバイクは、確か筆者が中学校に入った頃に我が家にやってきたと記憶しています。元々何の免許も持っていなかった父が、原付免許を取って買ったものです。マニュアルクラッチの4段リターン式でしたから、2代目モデルだったのでしょう。色は黑でした。
庭のテラス(と言っても、父が日曜大工で作った簡易なもの)に車体カバーをかけて置いてありました。まだ乗ることができない筆者は、時々カバーを外してまたがったり、こっそりエンジンをかけて遊んだりしていました。初めてエンジンをかけたときは感動しました。
【ツーリング・エピソード】
高校1年生の夏に原付免許を取ると、すぐにダックスであちこちに出かけました。最初は地元の市内をウロウロしていたのですが、そのうち少しずつ遠出をするようになりました。
このバイクで行った最も遠い所は、自宅から片道50kmくらいのところにある奥多摩湖(東京都)でした。途中で出会うライダーたちにピースサインを送られ、最初こそ戸惑ったものの、以降は自分からもピースサインを出すようになりました。ツーリングのときはそうするものなのだという、ライダー同士の仲間意識みたいなものを味わったのを覚えています。ただ、それもそれほど長くは続かず、1980年代に起こったバイクブームでライダーの数が劇的に増えると、面倒くさかったのかいつの間にかそのような習慣はなくなってしまいました。現在のライダーたちはどうなのでしょうか。
【長所・短所】
このバイクの長所は、とにかく気軽に乗れるところです。車重もそれほどないので、ヒョイと方向転換もできます。肩ひじはらずに乗れるのがいいですね。
一方、短所はガソリンタンクが小さくて(確か2.5リットル)、遠くに行けなかったことです。しかも、燃費があまり良くありませんでした(30km/lくらい)。奥多摩の帰りには給油が必要でした。また、ホンダらしく小エンジンでも4ストロークだったので非力で、発進加速は他社の2ストローク・エンジンのモデルにまったくかないませんでした。最高速度は50km/hくらいでした。
【お別れ】
後に、父が仕事に必要で小型二輪免許を取ってCD125を購入したことや、筆者が次回紹介するXL125Sを購入したことで、ダックスは必要がなくなり、ある日廃品回収業者に引き取ってもらったように記憶しています。今なら数十万円で取り引きされているようですから、惜しいことをしました。
筆者にバイクに乗ることとツーリングの楽しさを教えてくれた、思い出深いモデルです。2022年に発売されたダックス125を見て、懐かしさが込み上げてくるのは、きっとそのときの記憶のせいでしょう。ただし、その当時の写真が1枚も残っていないので、このページの写真はすべてネットから拾ったものです。(12/3/2022)
初代ST50
2代目ST50
ST90「マイティダックス」