5文型とは?どうやって見分けるの?

英語の文型といえば、筆者が生徒であった頃は中学校でも「第○文型」などと習った記憶があります。ただし、それが教科書にも載っていたものであったかは定かではありません。しかし、高校では「英文法」という科目があり、その中できちんと習ったと記憶しています。ということで、読者の方が中学生であれば、英文をより論理的に理解するための少し背伸びした予習として読んでください。

 

では、最新の高校の教科書、さらには学習指導要領でどのような記述が見られるかというと、少なくとも後者には「文型」という表現はありません。その代わり、「第1 英語コミュニケーション」の「2 内容」の「[知識及び技能]」の「(1) 英語の特徴やきまりに関する事項」の「エ 文構造及び文法事項」に「(ア) 文構造のうち、活用頻度の高いもの」とだけ示されています。それが何を指すのかは『解説編』を見るとわかりますが、いわゆる「主語+動詞+目的語」のような表記で現せるものがいくつか載っています。

 

それらをよく見ると、いわゆる5文型にあたるものがすべて例示されていますが、「文型」あるいは「第○文型」のような表現はどこにもありません。ただ、筆者が神奈川大学で「学習英文法」の授業を担当した際に受講者に聞いた話では、全員が高校時代に「5文型」や「第○文型」ということば及び分類は習った経験があるということでしたので(ただし、それが塾を含めたものであったかは確認していません)、現在でも多くの高校生が何らかの機会にそれを学んでいることが推測されます。

 

一方、学校の英語教師以外の英語教師の一部の人は、「文型など習わなくても英語を習得することはできる」とか「そもそも英文を『第○文型』などと分類する意味はない」などと言います。筆者も英文法の指導者として突き詰めて考えるとそのような意見が顔を持ち上げてきます。ただ、英語の初学者、英語をあまり得意としていない人、もう一度英語を学び直したいという人で、普段の生活の中で身の回りに英語を使う環境がない人にとっては、限られた知識と技能の中でなんとか相手の言っていることを理解したり伝えたい内容を表現したりするには、ある程度の“分析的な”脳の作業は必要です。その際に、「この文は第○文型だと思われる」などと思わなくても、「この文は<主語+動詞+目的語+補語>の構造だから、この文の意味は『…』になるな」と考える力は必要でしょう。

 

そこで、ここでは「第○文型」を覚えることを目的とするのではなく、5文型のちがいをはっきりさせた上でそのちがいから意味を類推できることを目的とした話をしていきたいと思います。なお、各文型の例文の多くを『ニューアプローチ英文法』(東京書籍)から拝借しています。

 

1. 5文型

なにはともあれ、5文型と呼ばれる英語の5つの文型を改めて確認してみましょう。

 

・第1文型:主語+動詞(S+V)

・第2文型:主語+動詞+補語(S+V+C)

・第3文型:主語+動詞+目的語(S+V+O)

・第4文型:主語+動詞+間接目的語+直接目的語(S+V+O+O)

・第5文型:主語+動詞+目的語+補語(S+V+O+C)

 

上記のS、V、C、Oの記号はそれぞれ subject、verb、complement、object の頭文字です。 

 

次に、上記のそれぞれについて詳しく見ていきましょう。

 

(1) 第1文型:主語動詞

 The train stopped.

Tom walks to school.

I will stay at home on Sunday.

 

英文の中でもっとも基本的かつシンプルな作りの文型です。基本的には①のように「主語」と「動詞」だけで文が成り立っています。もちろん、②や③のようにその2つ以外の表現が一緒にあることも多いのですが、文として成り立つものかどうかという点ではその2つの要素だけで大丈夫だという文です。また、③では助動詞 will と動詞 stay は2語で「述部」とする方が正確ですが、ここでは文型の見方という視点からその部分も「動詞」とします(以下同様)。なお、この文で使われる動詞は第3文型で使われる動詞のように目的語を必要としないことから、「自動詞」(おそらく「力で成り立つ動詞」という意味)と呼ばれます。

 

(2) 第2文型:主語動詞補語

 I am a Japanese.

 My father is sick.

 She will get well in a few days.

 Bill looks strong.

 

この文型の文は、「主語」と「動詞」に加えて主語の様子を説明する(補う)語である「補語」が動詞の直後に加えられているものです。補語とは、主語や目的語などの名詞(代名詞)の表す内容を足するで、名詞または形容詞があてられます。よく見ればわかりますが、①~④の文は補語がないと文としての意味をなしません。①は動詞がbe動詞で補語が名詞の例、②は動詞がbe動詞で補語が形容詞の例、③は動詞が一般動詞で補語が副詞の例、④は動詞が一般動詞で補語が形容詞の例です。この文型で使われる一般動詞は自動詞ですが、直後に補語がないと意味が確定できないものになっています。

 

(3) 第3文型:主語動詞目的語

 I have two cameras.

 We have studied English for three years.

 Jane will invite us to her party.

 He took off his coat

 

この文型の文は、動詞の後ろにその動詞の行動の対象となる語、すなわち「目的語」があるのが特徴です。目的語は基本的に物や人を表す名詞または名詞句で、多くが「~を」という意味になります。「~を」という語をとらないと意味が成立しない動詞を「他動詞」と呼び、この文型の動詞はすべて他動詞です。①は一般動詞とその目的語の例、②は一般動詞の現在完了とその目的語の例、③は助動詞+一般動詞とその目的語の例、④は動詞+副詞 で1つの他動詞とみなる例です。

 

<さまざまな「目的語」の例>

⑤ I want to eat an apple.

⑥ Tom likes swimming in the sea.

⑦ I don't know what to buy for Nancy.

⑧ She thinks (that) we are sisters.

⑨ The man asked where the station was.

 

この文型の目的語には、単語以外にも様々な表現があります。⑤は不定詞の名詞用法の例、⑥は動詞名の例、⑦は疑問詞+不定詞の形容詞用法の例、⑧は接続詞 that の名詞節の例、⑨は間接疑問文の例です。これらはみな「~することを」という動詞の行動の対象となる内容となっています。 

 

(4) 第4文型:主語動詞間接目的語直接目的語IODO

 I gave Tom a book.

 My father bought me a new bicycle.

 He asked her some questions.

 

この文型は、「~を」という目的語の前に「~に」という動詞の行動を与える対象(多くは人)となる目的語をはさんだ文です。目的語が2つ並ぶことから、「~に」にあたるものを「間接目的語」(indirect object)、「~に」にあたるものを「直接目的語」(direct object)と呼んで区別しています。いずれの目的語も基本的には名詞または名詞句です。

 

<さまざまな「直接目的語」の例>

④ I asked him how to use the key.

⑤ He told us why he was late.

⑥ Nancy asked me to drive her home.

⑦ We told her to be careful.

 

この文型でも、直接目的語として単語以外の様々な表現があります。④は how+不定詞の形容詞用法の例、⑤は間接疑問文の例、⑥と⑦は不定詞の名詞用法の例です。いずれも「~することを」という動詞の行動の対象となる内容となっています。

 

(5) 第5文型:主語動詞目的語補語

 She calls her cat Sally.

 I found the box empty.

 He left the window open.

 

この文型は、「~を」という目的語の後ろにその目的語の様子を説明する補語が置かれた文です。補語は基本的に名詞または形容詞です。あとで詳しく説明しますが、第4文型とのちがいは、補語が目的語を説明する関係、すなわち目的語 is 補語>の関係が成り立っていることです(第4文型では2つの目的語の間にこの関係は成り立っていません)。例えば、①であれば "Her cat is Sally." という文が成り立ちます。

 

2. 文型の見分け方

 

上記1. の説明をよく読んでいただければそれぞれの文型を見分けられると思うのですが、改めてまちがえやすい文型同士の見分け方のポイントを説明します。

 

(1) 第1文型とその他の文型

動詞で文が終わっていれば第1文型だとすぐにわかりますが、そのような文はむしろ希なので、なかなか見分けがつかないという人もいるでしょう。例えば、既出の文では次の2文がそうだと思います。

Tom walks to school.

I will stay at home on Sunday. 

 

まず結論を先に言うと、動詞の後ろにそれがないと文が成り立たないような表現が無ければ「第1文型」、文を成り立たせるのに必要な目的語や補語があればそれ以外の文型ということになります。

 

➀では to school が、➁では at home が動詞の目的語または補語ではないのかという疑問があるかもしれません。しかし、そうではないことは、それぞれを消してしまって文が成り立つかどうかでわかります。➀を Tom walks. とすると「トムは歩く」となり、何かが足りないような気がしますが、トムの日常生活を表す表現として文としては成り立っています。この表現との対照として Tom runs (to school). を考えてみればわかります。➁を I will stay on Sunday. としてもそうです。この場合は「日曜日はじっとしている(=外出はしない)という文として成り立ちます。

 

第1文型に使われる動詞は「自動詞」であることは前に述べました。①の walk は「歩く」、②は「滞在する」ですからそれでわかりますが、少しやっかいなのは walk には「~を歩かせる」、stay には「~を支える」という他動詞もあることです。ただ、①も②も他動詞の意味で使われているのではないことが文全体からわかるでしょう。

 

(2) 第2文型と第3文型

動詞の後ろに何かが1つあれば第2文型か第3文型となりますが、どうやって見分けるのかを改めてまとめてみます。既出の文で見てみましょう。

➀ My father is sick

➁ She will get well in a few days.

③ Jane will invite us to her party.

➃ He took off his coat

 

まず結論ですが、第2文型と第3文型のちがいは動詞の直後に補語があれば第2文型、動詞の直後に目的語があれば第3文型となることです。

 

わかりやすいのは➀で、be動詞(ここでは is)は後ろに補語しか置けない(=目的語をとらない)ので、be動詞の文は必ず第2文型です。➁は少し面倒です。get は自動詞と他動詞があるので、それを見分けなければいけません。well は副詞なので目的語にはなりえず補語とみなせます。したがって、第2文型です。③は動詞 invite の後ろに代名詞 us があるのでそれが目的語だとわかり、第3文型です。➃は動詞 took(<take) off の後ろに名詞 his coat があるので第3文型となります。 

 

(3) 第3文型と第4文型

目的語をとる他動詞の多くがこの2つの文型で使われるので、一目見たときはどちらかわからないということもあるかもしれませんが、よくよく注意してみるとそれほど難しくはありません。これについてはちがいを明確にするために同じ動詞の文で見てみましょう。

I gave some cookies to my daughter.

I gave my daughter some cookies.

 

まず結論ですが、動詞の直後に目的語が1つだけあれば第3文型、動詞の直後に目的語が2つあれば第4文型となります。

 

いずれの文も「私の娘にクッキーをあげた」という文ですが、➀は目的語として some daughter だけ、➁は目的語として my daughter と some cookies の2つあります。したがって、➀は第3文型、➁は第4文型ということになります。➀の my daughter は to my daughter という前置詞句として独立した表現なので、この文を成り立たせる要素である目的語にはならないことに注意してください。

 

なお、➀と➁のような文についてはよく問題集などで「同じ意味の別の形の文に書き直しなさい」という問題として出されることがありますが、文型が異なれば意味やニュアンスは異なるので、けっして「同じ意味の文」ではありません。その件については改めて別のページでお話ししましょう。  

 

(4) 第4文型と第5文型

動詞の後ろに2つの文を構成する要素があるこの2文型のちがいを判断するの少し面倒ですね。しかし、基本をしっかり頭に入れておけばすぐにわかると思います。既出の文で見てみましょう。

➀ I gave Tom a book.

➁ She calls her cat Sally.

 

まず結論ですが、動詞の直後が目的語+目的語であれば第4文型、動詞の直後が目的語+補語であれば第5文型です。

 

とはいうものの、それを見分けるのが難しいわけですね。特に➀➁の文のように動詞の後ろにあるのがいずれも名詞2つであるというのがやっかいです。そのときの見分け方のポイントは、その2つの表現(ここでは「A」と「B」とします)の関係を見てみることです。その関係とは「A is B」の関係が成り立っているかどうかということです。もしそれが成り立っていれば、BはAの補語になるので第5文型、もし成り立っていなければAもBもそれぞれ動詞の目的語なので第4文型となります。例えば、➀では Tom is a book とは言えませんから第4文型、➁は Her cat is Sally と言えるので第5文型だとわかります。

 

いかがだったでしょうか。文型に関する理解が少しでも深まってもらえたら幸いです。