同じ y で終わっている動詞なのに、三人称単数現在の s をつけるのに2つのやり方があるのはなぜでしょうか?
「それはね、母音+y の時は s だけでいいけど、子音+ y の時は y を i に変えて es をつけると習ったから。」
※「y を i に変えて es をつける」については「3. babyの複数形は「y を i に変えて es をつける」ではない」を参照。
確かに私もそのように習いました。でも、それでは私の質問への答えになっていません。なぜ、study は studies にしなければならないのでしょうか? こう尋ねられて、すぐに答えが出てこない人に本ページがお役に立つでしょう。
この問いが「つづりと発音に関すること」のコーナーで取り上げられているということは、最終的な答えは発音とつづりに関係するということになります。この視点から話を進めます。
study を studies にするということは、逆に言えば studys では困ることがあるということになります。その困ることとは何でしょうか。
それは、やはり語末にある y がキーとなります。
よく知られている単語を例にするために、動詞に限らず y が入っている単語を見てみます。
y は語頭に来ると子音の y の音「(ェ)イ」になります。なお、この y の音は子音であって母音の「イ」ではありません(子音の中では「半母音」とされています)。
yes, yesterday, yellow
しかし、語の途中や語末に来ると、母音の「イー」か「アイ」(または「イ」)を表す文字として使われます。
・「イー」…lily, tiny, study
・「アイ」…cycle, type ※「イ」… lyric, mysterious
y の部分が「イー」になるのか「アイ」になるのかは、上記のような典型的な語でわかると思います。
そうです。語末にあると「イ-」、語の途中にあると「アイ」です。
つまり、ネイティブ・スピーカーは語の途中に y があり、しかもそれが子音字にはさまれていると、その部分は「アイ」と発音する可能性が高いと瞬時に判断するわけです(もちろん、「イ」と発音される場合もあることは、lyric と mysterious の例からわかります)。
ですから、study の三単現を studys と書くと、「スタダイズ」とか「ステューダイズ」と読むものだと思われてしまうわけです。そう読まれては困りますし、なんとしても「スタディーズ」と読んでほしいので、y以外に「イー」と発音するつづりをあてはめたいわけです。そこで、「3. baby の複数形は「y を i に変えて es をつける」ではない」でも取り上げている ie の登場となるわけです。こうすれば、"...dies" の部分は「ディーズ」と読めるので、そう読んでもらうためにこのつづりが採用されたというわけです。
一方、play や key など、y の前に母音字がある場合は、ay と ey の発音は決まっていて、後ろに s が来ても発音は動きません。つまり、「母音字+y+子音字」の単語では「母音字+y」の発音が優先されるので、そのまま s をつけても発音が変わらないのです。
なお、ここでは三単現の (e)s について取り上げましたが、例に使った語を見ればわかるとおり、名詞の複数形の場合も同じ発音とつづりの関係が適用されます。
以上のことを考えると、今回のテーマは「三単現の (e)s の付け方」ではなく、「語末に s という文字を加える時に注意すべき点」とした方がいいかもしれません。
いかがでしたでしょうか? 今回の「なぜ?」の理由はおわかりいただけましたか?
単に言われるままに「そういうものだ」と思い込まされているより、理由を理解して覚えておく方が納得して頭に入れられますよね。(11/10/2018)
今回の内容も、こちらから生徒に一方的に答えを言ってしまうのではなく、問いを投げかけ、答えを拾いながら目的とする回答へ生徒を導くような指導をしたいものです。肝は、「studys ではなぜダメなのか?」というところに議論を持っていくことです。そうすることで、発音とつづりの関係の話に持っていきやすくなります。
ただ、初学者に複数形の (e)s や三単現の (e)s の付け方を指導した直後に今回の話を持ってくるのはおそらく性急でしょう。生徒はまだ付け方のルールも学んだばかりで、それを覚えるのだけで精一杯です。ですから、しばらく経ってから、「そう言えば…」と振り返る形で指導してあげるといいと思います。高校の先生なら、「中学校で習った三単現のsの付け方だけど、study の時はなぜ studies となんだろう?」と改めて考えさせると、きっと彼らの知的好奇心をくすぐれると思います。その点で言うと、知的好奇心の高い生徒が集まっている進学校ほど面白い授業ができると思うのですが…。